DL#96 相場瑛太
努力をくれる集団
私は耳が聞こえません。電車が頭上を通ってようやく聞こえるぐらい。
私はハドルの声も、ディフェンスのコールも、QBのコールも一度も聞いたことない部活人生でした。QBは「ダーン、セッ、ハッ、ハッ」と言うのも最近知りました。
音は、アメフトにおいて重要なもので、スタートするときのコールも音、サインを決めるハドルも音、戦略を練るミーティングで話される情報も音です。
音のない世界で生きる私はサインの面や意思疎通の面で大変なこともありましたが、意外と悪くないのです。
QBのコールに惑わされることはなく、プレーに専念することができ、思う存分楽しんで暴れることができました。
入部当時が昨日のように思い出されます。アメフト部に先に入部した友人からの誘いで、アメフトの体験会に行きました。周りの雰囲気に圧倒され、俺には向いてないなと思い、入らないでいようと思いました。
そこに、スタッフの一人が私のところに来て、何かを話しかけてきました。聞こえない私は何を言ってるかわからず、適当に頷くと囲みの先頭に立たされました。
つまり、スタッフは「入部する?」と言ってたみたいで、流れるままに流れて、自己紹介してライン交換して入部しました。これも縁かなと思い、少し続けてみることにしました。
なんだかんだアメフトは楽しくて、すっかり魅入られました。ルールはわからなかったけれど、先輩方やコーチの方々をぶん投げたり、ボコボコにできる快感がたまらなくて、病みつきになりました。
入ったときは、耳が聞こえないこともあり、アメフト部の人からあまり期待されていなかったと思います。すぐ辞めるだろうって。
幸いなことに運動能力と身体能力には自信があったので、入部当時から思いっきり先輩に当たることができました。
怪我もなく順調に私の力が認められていき、後発ですが、2年生からも試合に出ることができQBサックも決めて行きました。
しかし、私の悪い癖’おサボり’が発動してしまい、練習は休み、遅刻はいつものことで、サインもろくに覚えず、本来出場できるはずだったであろう試合が延びに延びて、後発で出たことはあってもスターターで出たのは3年生の日本大学戦が初めてでした。
その試合は一生忘れられない試合となりました。
QBサックが決まったときの快感、決めた私を迎え入れる仲間たちの顔、仲間と同じものを掴み取る素晴らしさをこの試合で改めて実感しました。
聞こえない私に優しく寄り添ってくれた先輩方、受け入れてくれた仲間達、後輩、この素晴らしいチームの一員になれた私は運がいいと思います。
もし、ひとつ心残りがあるとするならば、サボってきた時間。1年生の時にもっと練習に行っていれば、ウェイトで1キロでも重く上げていれば、もっともっと強い選手になれていたのかなぁと思います。
最後になりますが、日頃より応援してくださっている皆さまに感謝を申し上げます。秋リーグ戦も応援よろしくお願いします。