AS 礫石恭伍
なぜ辞めずにここまで来られたのか
(記 2021.11.5)
なぜ辞めずにここまで来られたのか。
50期のみんなはよくわかっていると思いますが、自分が置かれてきた状況を鑑みれば、辞めてもおかしくなかったはずです。むしろ辞めるという判断をする方が自然だったと思います。51~53期のみなさんからすれば、よくわからない長い文章になってしまうかもしれませんが、これまでほとんど誰にも話してこなかったことも含めて、取り繕わず、正直に書こうと思います。
自分は下級生があまりちゃんとやっていないとしても、他のパートに迷惑をかけていない限りほとんど何かいうことはしてきませんでした。それを寛大だと捉えてくれた人もいるかもしれませんが、違います。1年生のときの自分のことを思うと、強く言えないのです。
1年生のとき、同期6人の中で、自分はASとしての能力もやる気もないほうでした。秋シーズンになっても基本playすらちゃんと見分けることができず、日々自分がやっていることに対するやりがいを感じたことはほとんどありませんでした。とりあえず上級生に怒られたくないから、最低限のことはしていましたが、おそらく上級生から見て「ちゃんとやっていない」下級生だったと思います。そのとき自分が厳しく言われていたら耐えられただろうかと考えてしまいます。良くないことだとはわかっていますが、AS1年は、知識のことは置いておいて、アメフトの楽しさを感じて2年になってくれればそれでいいと思ってしまっています。
1年生のときの秋シーズンの駒澤大学戦では、前評判通りの厳しい戦いを強いられ、前半終了時には10点ビハインドの状態でしたが、そこから逆転で勝利を収めました。当日スポッターのコードの担当で、石原コーチと当時のエースQBの多矢さんの会話を聞きながら、熱く、心震える試合を間近で観られたことは今となっても大きなことだったと思います。ASを続ける原動力を与えてもらったといっても過言ではないと思います。
2年生になり、春シーズンを迎えるまでに、前年の秋シーズンの試合の情報を同期と議論しながらまとめていく中で、だんだんといろいろなことがわかるようになり、楽しさを少しずつ感じることができるようになりました。そして、後輩が7人入部し、上級生となりました。彼らは自分とは異なり、とても優秀で意欲的で、語弊のある言い方かもしれませんが、なぜそんなにやる気があるのかよくわかりませんでした。
春シーズン終了のタイミングで同期2人が辞め、50期ASは自分一人になりました。
ただ、不思議とその時すぐに辞めようとは思いませんでしたが、それと同時に自分も最後まで続けることはできないだろうなとも思っていました。辞めていく同期の一人から、
「1年生は何も悪くない。2年生が誰もいなくなれば、1年生は何もわからないまま今シーズンが終わってしまう。わがままなお願いだとはわかっているけど、今シーズンが終わるまでは彼らの面倒をみてあげてほしい。よろしく頼む。」
と言われました。1年生のときの自分は何もわからなかった。彼らにそうなってほしくない。Offense、Defense、KickそれぞれのUnitに最低限の知識を持った状態で送り出せるようにできる限りのことはしてあげたい。この言葉が、自分がそのシーズンの最後まで続ける前向きな理由になりました。
ただ、初めて上級生として迎える秋シーズンは思った以上にやらなければならないことが多く、1人で1年生7人それぞれに対して十分なサポートをしてあげることはできませんでした。各大学のOffenseのplayの解説をするなど、それまでやっていなかったこともしましたが、自分ができることをすべてやりきったといえるほどの自信はないです。また、優秀で意欲的な彼らに自分は合っていなかったと思います。自分じゃなければもっと彼らを成長させてあげられたかもしれないと今でも思っています。本当に申し訳ないです。それでも51期は環境のせいにすることなく、成長を続け、Offense、Defense、KickそれぞれのUnitに分かれ、今各Unitで活躍してくれています。自分の教えたことがほんの少しでも彼らのためになっていれば嬉しいです。
コロナ禍となり、特に何も考えることなく、3年生の秋シーズンを迎えることになりました。自分が担当になっていた第2節の青山学院大学戦までやりきって辞めようと考えるようになりました。そのタイミングで辞めれば、51期は、自分がいないものとして、49期の先輩方にいろいろと教えてもらって、問題なく来シーズンを迎えることができる。来年自分が最上級生1人でいるよりも、51期4人が最上級生となってやっていった方が自由に動けていいのではないかという気持ちもどこかにあったかもしれません。同期から言われた最後のお願いを最低限果たした自分はここが引き際だと思い、試合の日を迎えました。
Offenseが苦しむ中で、Defenseは抜群の安定感を見せ、昨年よりも力をつけた青山学院大学を完封しました。試合で躍動するDefenseの選手の姿に力をもらい、このまま続けたいと思うようになり、その後は辞めようと考えることはなく、今に至っています。
大事にしている言葉が2つあります。
1つめは新古典派経済学の基礎を築いたアルフレッド・マーシャルの言葉です。
It will be my most cherished ambition,・・・to increase the number of those, whom Cambridge, ・・・sends out into the world with cool heads but warm hearts, willing to give some at least of their best powers to grappling with the social suffering around them; ・・・
要するに、冷静な頭脳と温かい心を持ちなさいということです。ASは冷静に対戦校を見て分析しなければならない一方で、選手に共感し、熱い気持ちを持って試合に臨まなければいけないと思います。この言葉はASのあるべき姿を示していると思います。
2つめはDefenseのミーティングの中で聞いた言葉です。
人のせいにするのが大事
何気なく言った言葉で本人も覚えていないと思います。他人任せで良くないように聞こえるかもしれませんが、真意はそうではありません。人のせいにするためには自分の役割を正しく遂行した上で、他の人の役割もちゃんと把握していなければいけません。Defense Unitで重要なことだと思いますが、他の組織でも当てはまることだと思います。
「礫石は一人だけどよく頑張っている。」
こう言われることがよくありましたが、そんなに「一人」だと感じたことはありません。
智之、佳寿、悠月、輝哉。
51期の4人がいつも優しく接してくれたからだと思います。
いろいろ思うところはあったと思いますが、ここまで一緒にやってきてくれてありがとう。
上級生に対しても意見が言えるところはみんなの強みだと思います。選手やコーチに対して何も言えないASはいないのと同じだと思います。間違っていることには間違っているといい、時には戦ったっていいと思います。ただ、自分ルールで動くわがままな人間にはならないように注意してください。
来年は最上級生として「自分が頑張らないと」って思うことがあると思います。ただ、みんなはもう既に十分頑張っています。どうか無理はしないようにしてください。向上心を持てないときがあってもいい。その日をとりあえず乗り切ることも大事なことです。
先日ついに秋シーズン初戦の国士舘大学戦を迎えました。
Defense Chiefは試合前のハドルで、
3点取られても満塁ホームランを打てばいい
と言っていました。しかし、試合では3 Touchdown取られたのに対し、Ball奪取は2回。Defenseとしては負けでした。
今度はDefenseで圧倒して勝ちたい。そのためにできる限りのことをしたいと思っています。
反省中深く考えすぎて黙り込んでしまうような愚直で普通にしていても面白いDefense Chief、体調不良から復帰して裏方に徹すると言っていたのに2試合連続でKickingでプライドマークを受賞した某OLBをはじめ、個性豊かで優しいDefense Unitのメンバーと一緒に試合を観て、反省をして、共に戦えていることは幸せなことだと思います。残された日々を後悔のないように過ごしていきます。
今年のマネジメントボードについての説明会の際に、マネジメントボードの方がこうおっしゃっていたのが心に残っています。
マネジメントボードに感謝なんかしなくていい。自分たちは勝手にやっているだけだ。みんなが試合で頑張ってくれて、おいしいお酒が飲めたら嬉しい。
このチームを想う全ての人たちのために最後まで全力を尽くします。