DB#25 大橋琢真
コーナーバックとして
入部当初、練習の終わりに主将とコーチの話を聞く。そのとき星を見上げて綺麗だなと思うと同時に、こんな熱い空間にいるのは間違っているかもしれないとも思った。ただ、一度やると決めたことをすぐに投げ出すのはダサいと思っていたため、ただがむしゃらに練習をした。もし周りに恵まれていなかったら、今まで続けていなかったかもしれない。夜遅くまで練習に付き合い、指導してくれた学生コーチの皆さん。授業の空きコマにトレーニングルームに行くと必ず誰かいる同期のみんな。特に3年生のとき、新型コロナウイルスの影響で練習することは叶わず、辞めたいと考えるようになった。しかし、半年の自粛期間を経てグラウンドに集まったとき、こんな居心地の良い組織を抜ける選択肢は消えた。
さて、私のポジションはコーナバックだ。タックルされたくない。体も大きくない。でも体力には自信があった。DBを志望したのは自然だった。コーナーバックはたった1プレーのミスで得点に繋がる。ひいては、負けに繋がる。2年生の秋シーズンでの神奈川大学戦。チームは35-33で勝利を収めたが、個人としては完敗だった。私のせいで何度も失点した。DL、LBがどれだけランを止めても一つのパスでフレッシュを許す。もし、試合に負けていたら今の自分は無かったかもしれない。 コーナーバックは割りに合わないと感じることもある。1プレーに対する重みが他ポジションに比べて大きい。全プレーに関わることはなく、もっと言えば半分以上のプレーに関わらない。ミスを取り返そうと思ってもそのシチュエーションが訪れないまま試合が終わることもしばしばあった。
そんなコーナーバックだが、もちろん魅力的な部分もある。まず一つはモメンタムを掴めることだ。目の前に対峙するWRに対して競り勝つことができれば、一気に流れが変わる。ブリッツによるパスラッシュあってのことだが、ほぼ一人でWRの1キャッチよりも遥かに価値あるプレーを生み出せる。いくら優れたRBだって、OLのブロックがなければゲインできない。そのビッグプレーを起こすための準備が面白い。どんなWRもある程度の癖があるし、QBの視線、投げ方によってプレーがわかることがある。クウォーターやダウンディスタンスによっても傾向がある。これが来ると確信してプレーが開始していいプレーが行えたとき、とても楽しい。
もう一つ、コーナーバックはコート全体がよく見える。相手のことを見渡せることももちろんいいことだが、味方の動きがよく見える。それまで一緒に練習してきた仲間を横目に見ると、リラックスしてプレーできる。こいつは疲れているなと感じたり、ミスを引きずってプレーしているやつがいるなと見えたりすることもある。そんなとき、気の利いた声掛けができたらいいのだが、口下手な私はうまく伝えられない。
他のポジションを選んでいたらもっと楽しかったかもしれないと考えたこともある。ただ、コーナバックとして過ごしてきたこの4年間の集大成を慶應義塾大学にぶつけたい。きっと自分が直接関われるプレーは少ない。その限られたプレーの中で必ずモメンタムを掴む。うまくディフェンスが機能していないとき、強いディフェンスに変えてみせる。
最後に、私はインターセプトできたとき、その嬉しさをあまり表情に出さない。嬉しくないわけじゃない。恥ずかしいというのもある。(笑)でも、それ以上に試合に勝つまでは笑えない。チームが勝利したときの喜びは格別だ。その快感を味わえるよう誠実にやりきる。