【MASTIFFS’22 Last essay #19】TR 伊藤郁

涙とともに乗り越えた4年間

(記:2022/11/14)

 

桜美林大学戦を終え、自分たちのラストシーズンに残された時間はあと2週間。ただ真っ直ぐに駆け抜けてきた日常がもうすぐ終わります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2019年4月9日、初めて多グラの土を踏んだ日。MASTIFFSのTRになることを決意した日です。

自分の直感だけを頼りに、4年間が始まりました。

 

勝負事が苦手で、負けることに抵抗のない、負けず嫌いとは真反対だった自分にとって、入部当初に見た先輩の姿は新鮮で自分とは違う世界の人たちでした。

この部には選手・スタッフ問わず、勝ちに対して貪欲に、真剣に取り組む人がたくさんいます。

自分以外の何かのために涙を流すスタッフ、上手くなるための時間を惜しまずグラウンドの照明が消えるまで練習をする、怪我をしたときにどんな手を使ってでもフィールドに戻ろうと奮闘する選手、、。

多少無理をしても、何かを犠牲にしても、チームの勝利のための努力を惜しまない。このような人たちとの出会い1つひとつが、今日までずっと自分の気持ちを奮い立たせてくれました。

 

幸運なことにTRは、選手を1番近くで1番長い時間見ることができるスタッフです。

試合で得点をしたり、良いプレーができたりしたときに、仲間の成功を自分のことのように喜び合い、楽しそうにアメフトをしている選手の姿を見ているのが1番好きな時間でした。生活の大部分をアメフトにかけ、血の滲むような努力をしてきた選手の姿を知っているからこそ、サイドラインで見るあの景色は一生頭から離れません。

 

私がこの4年間、頑張り続けることができたのはMASTIFFSという自分の居場所を失うのが怖かったからです。この部にいる人たちが好きで、大好きな景色を見ることができる環境を手放したくありませんでした。

ここを自分の居場所にするためには、1人のTRとして、1人のスタッフとして、そして1人の人間としてこの部に必要とされる存在になるしかない。その一心で4年間を過ごしてきました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

たくさんの涙を流した日々でした。

自分は元からTRに相応しい人ではありません。

選手を強くするため、フィジカル・メディカル面でのサポートをし、毎日選手と向き合うのがTRです。消極的で運動音痴、人に話しかけるのが苦手だった自分の前には大きな壁がありました。できないことが悔しくて、帰り道に涙した日がほとんどでした。

忙しいなか時間を作り、何度も何度も練習に付き合ってくださり、助言をくださったTRの先輩方のおかげで今の自分があります。

 

学生TRは想像以上に無力です。痛みを取り除くことも、怪我を治すこともできません。その事実を頭では理解しているつもりでも、怪我をした選手を前にすると、自分の無力さややるせ無さに涙が溢れました。

痛みを誤魔化すためにテーピングを巻き、なんとか出場した試合後に「試合に出れてよかった、ありがとう」と言ってくれた選手。怪我が完治せず、万全の状態ではないままフィールドに立たせてしまった試合を「楽しかった」と思いを伝えてくれた選手。

力になれず悔しい思いを抱きながらも、選手の言葉に何度も救われてきました。

 

最後の1年間は、 責任が重くなり、自分の影響力が大きくなりました。決断することや行動することが怖くなったり、チーム全体が上手くいかないことを不甲斐なく感じる日々の連続でした。心身ともにボロボロになっていく同期を見ているのが1番辛く、思わず涙が出たとき、一緒に涙を流し、背中に寄り添ってくれた同期がいました。

チームスポーツでもチームの運営でも、個人の努力が結果に結びつかないことの方が多いと実感した1年でした。ずっと側で見てきた同期選手・スタッフの努力が、どんな形でもいいから報われてほしい。そんなことを考える時間が増えていきました。

 

2022年11月12日、今度こそ勝利を掴み取りたかった桜美林大学戦。

結果は望んでいたものではありませんでした。満足のいく試合ではなかったです。

しかしこの日、試合中のあるシーンで、この部に入ってから初めて嬉し涙が出ました。今までの涙が無駄ではなかった、ここに自分の居場所があってよかったと心の底から思えました。

 

あと2週間、自分らしく全力で駆け抜けます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この部で過ごした日々は、楽しいことよりも苦しく辛いことの方が多かったかもしれません。

それを知ったうえで、今もう一度最初に戻っても、同じ決断をすると自信を持って言えます。

 

拙い文章を最後まで読んでくださりありがとうございました。

あまり表に出すことのなかった自分の気持ちが、同期、後輩、お世話になった先輩方、支えてくださったコーチの皆様、そして1番近くで力を貸してくれた家族に少しでも伝わっていたらいいなと思います。

 

最後になりましたが、OB・OG、後援会、ファンクラブの皆様、日頃よりご支援、ご声援を賜りましてありがとうございます。無観客の試合を経験したからこそ、スタンドがオレンジ色に染まるなかで試合ができることの喜びを感じています。2週間後に迫る日本大学戦は、悲願のTOP8の舞台で戦える最後の試合です。試合終了の瞬間まで、ともに戦っていただけますと幸いです。