LB#52 吉田健志
一生返せない恩を返すために
 ̄ ̄ ̄ ̄
もう、自分は皆とフィールドで一緒に戦えない。決めたのは、つい先日だ。
自分は仲間が欲しくてこの部に入りました。中高時代、陸上部で1人黙々と走ることが多かった私にとって、1年生で初めてアメフト部のグラウンドに訪れた時の光景は鮮烈でした。
大勢の先輩方が互いに声を掛け合い、勝利に対して泥臭く取り組む活気あふれる雰囲気に惹かれました。何より、どの先輩も人間としての器が大きく、自分もこの人達のようになりたいと考えるようになっていました。そして気が付けば、既に入部を決めていた陸上部を辞め、アメフト部の練習に参加していました。
振り返れば、自分は不器用な人間でした。
瞬時に相手の情報を処理して、リアクションし、動く。このディフェンダーとしては当たり前で単純明快なことがずっと自分は苦手でした。それを練習量でカバーしようとして、体に負荷をかけて怪我をして、治ってもまだ同じことを繰り返す。怪我の間に周りとの差が開いていることを考えると、体は二の次にしてとにかくがむしゃらに練習していました。
そして、自分は勝手な人間でした。
勝手に無茶なことをして、その度に人の信頼を裏切ってきました。そして、自分の失敗は全て自業自得なのに、それでも助けてくれる周りの存在に甘えていました。彼らと一緒にプレーしたいからと、「何でそんなことをするのか。限度を知れ。」と言われても、薬を飲みながら騙し騙しでプレーし続けました。結果はなるべくしてなったと言うべきか、体に限界が訪れました。動けない体で天井とにらめっこしながら、何とも言えない悲しさだけがこみ上げてきました。そして、散々悩み、選手としての活動に、区切りを付けることに決めました。今までお世話になった方々への報告がこういった形になったのは、もうプレーができないという悔しさ以上につらいものがありました。
しかし何よりも、自分は幸せな人間です。
チームに対して何ももたらすことができない自分。選手として使い物にならなくなった自分。今まで受けた恩を返せない自分。しかし、そんな自分にそれでも一緒に戦おうと言ってくれた皆、根気強く指導してくださったコーチの方々、あきれつつも手を差し伸べてくださった先輩方、こんな自分を先輩と呼んでくれる後輩、そして同期。そんな、自分が関わるのもおこがましいほどに素晴らしくも尊敬できる皆と、最後まで戦うチャンスを得たのだから。ここでどう取り組んだかが、私の4年間の幕切れがあっけないものだったのか、それとも素晴らしいものだったかを決めると言っても過言ではありません。
皆から受けた恩はもはや返せないほどに大きい。昨今の情勢下でありながら、リーグ戦が開催されたのは、たとえ昇格という2文字が無くとも感謝すべきことだと私は思います。なぜなら、皆と『熱く戦い、熱くやりきる』舞台を用意していただけたのだから。ある方が私にこう言いました、「チームにとって邪魔なのは、自分のできる最大限をぶつけない中途半端な者だ。」と。まさにその通りだと今なら言えます。だから、かつて憧れた偉大な先輩方と違う形でもいい。自身もできうる限り最大限の力を以て、この舞台に臨む。胸を張って自分が皆の仲間だと言えるように、最後に仲間と笑って終える為に。
最後に、昨今の情勢下にも関わらず、多大なるご支援をしてくださる後援会、OB・OGの方々に心より御礼申し上げます。また、秋リーグ戦開催に当たり、尽力してくださった全ての方々につきましても心より御礼申し上げます。日々スローガンを体現し、TOP8に相応しいチームになるべく、部員一同取り組んでいく所存です。このような情勢下ですので、くれぐれも体調にはお気を付けください。今シーズン、そしてこれからのMASTIFFSに対しても変わらぬご支援・ご声援をどうかよろしくお願いいたします。